2009 大山・山陰絵日記 「地引網で野外学習」 6月30日

先週の日曜日。
通常静寂に包まれ、釣り人がちらほらと点在するだけの朝7時の弓ヶ浜は、期待に胸をふくらませ必死に網を引く小学生たちの元気で満ち溢れていました。

地元・境港市の中浜小学校の生徒さんと保護者たちによる「地引網体験」。
無邪気にはしゃぐ子供達の顔をみて安堵の表情を迎える大人たち。
この本番を迎えるまでに積み重ねてきた子を思う親の思い、そして地域の誇りを伝えたいという二人の男の情熱が、今回のこの企画を実現するに至ったことを知る人はあまりいません。

仕掛け人は、大山王国でもおなじみ、以前おいしいカニ料理などを伝授してくれた水産庁の上田勝彦さん。
そして弓ヶ浜でウィンドサーフィンのスクール・体験・ショップなどを運営する「マウイ」のオーナー。

まず4年前、上田さんが兵庫県の香住の港で捨ててあったという穴だらけの地引網を譲りうけたのがこのストーリーのきっかけ。

いつか使えるかもしれないと地元に持ち帰り倉庫にほったらかしていたのですが、昨年の10月、地元の小学校の父親委員会に声をかけたことをきっかけにこのプロジェクトは動き始めます。

この委員会、通称「おやじの会」は,中浜小に通う子供達の様々な職種の父親たちが、日頃から集まっては,子供達の「楽しいこと」、子供達が「育つこと」のテーマを探し活動しているそうで・・・。

そこにこの話が舞い込み、集まった保護者たちはやる気満々に行動を決断。いつか「子供たちに地引き網体験を」を合言葉に、以後地引網の補修作業を連日続けることとなったのです。

今回の地引網のポイントは,“観光地引き網”ではなく、地域の親たちの「手作り」による野外学習であるということ。
境港の地域の誇りで漁業、海の素晴らしさ、漁師の苦労、魚のおいしさ・大切さを未来を支える子供たちに少しでもわかってほしいそんな思いが込められています。

ただ問題は山積み。
網も拾ってきたものの、集まった父親たちは,上田さん以外は全員が全くのシロウト。従って、網針(あばり)の使い方、補修の縫い方、ロープの結び方まで全てゼロからの出発だっあたそうで、これには上田さんもひと苦労。
ただそこは熱いハートの持ち主でもある上田さんのこと。やる気になっている父親の思いに応えるべく、一生懸命に、そして丁寧に教えていく時間が延々と続いていきました。
うれしいことに、この活動が知られるにつれ支援の輪はどんどんと広がっていきます。
網を沖合に曳いていく船や網を乗せる船なども、委員会のメンバーや地元の方の好意で貸してもらったものだそうで、しかも浜には漁業権があるため勝手に網を曳いたりすることが出来ないのですが、地元漁協の組合長にその主旨を話したところ、実施を快く承諾。周囲のサポートがあってこのプロジェクトはついに実施の時を迎えます。

そして、本日。
主役はもちろん子供たち。

大はしゃぎする子供たちの姿を笑顔で見つめる大人達。

満足げな保護者の表情の裏には、上記に綴った苦労、情熱があったからこそ。

目に見えない親子の絆、そして地域の子供達に漁業の素晴らしさを伝える、海の偉大さを伝える男の物語があってこそ感じられるこのプロジェクトの素晴らしさ。

いつもながらにそうですが、地域に愛情を持つ人間が一人でもいれば、その地域を動かすことができる事実。

地域愛、アイデア、実行力。
改めてそのパワーに拍手。
きっと参加した子供達にはその楽しさ、海の大切さ、仕事の苦労が伝わったに違いありません。

このプロジェクトは、夏にもう一度実施。
もっと多くの家族に参加してもらうため、上田さんは声かけを継続。網仕事も伝授していくとのこと。
次回は、引き揚げだけでなく、朝の4時頃から船を出し網を入れるところから子供たちに体験させてあげる予定だそうです。

上田さん曰く
「今回よりも疲れるだろうけど、今回よりも満足度UPマチガイナシ。地引き網という大きな仕掛けだけに、働いた量が大きいほどに手応えが増すんだよ。ぜひ子供たちには地元に伝わる漁業という伝統を肌で感じ、その偉大さ、楽しさをわかってほしいね〜」

いつも思うことですが、上田さんといる自然に体が動きます。
元気をもらいます。

言葉よりも行動で。
いろんな苦労があるはずなのに、表では一切そうした一面をみせない。

「背中をみて育て」。
私たちも彼からいつもそうしたことを学んでいます。

ありがとう。
そしてお疲れさまです。


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