古来より中国山地は良質の砂鉄を産出するわが国でも有数の土地柄であったといわれています。この砂鉄を高温で溶かし鋼として用い、強くて美しい日本刀などに加工し、または原料として全国に送り届けられていたことは史実として知られているところです。今で言う最先端の第二次産業集積地だったのではないでしょうか、おそらくは日本中の権力者や技術者はこの緑多き山々に囲まれたこの地方を憧れと一種の畏敬の念を抱いて遠くから眺めていたことでしょう。しかしこの華々しい産業経済の隆盛の影で第一次産業、すなわち農業、林業、水産業、とりわけ農業に生活の糧を頼った農民達との泥沼の戦いの歴史はいつの時代もそうであったように時として庶民には正確に伝わらなかった、いや伝えられなかったのかもしれません。
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